食欲を落ち着かせる具体的な方法

食欲を乱す主な原因は、主に「食事」「睡眠」「ストレス」「腸内環境」「習慣」の5つにあります。

*5つの原因については、「食欲コントロールを乱す5つの原因」を参考にしてください。

この中でも、特に「食事」「睡眠」「ストレス」「腸内環境」の4つが原因で食欲が乱れている人は多いです。

そこで今回は、「食欲を落ち着かせるための具体的な方法」について解説します。

基本的には、現状から食欲を乱している原因を予測して、可能性が高いものから改善して食欲の変化を確認します。ただ、もし原因が予測できなければ、書いてある手順で生活を見直して改善し、食欲の変化を確認してみてください。

食事を整えて食欲を落ち着かせる

ダイエット中であれば、食事のバランスが崩れているために食欲が乱れている可能性が高いので、まずは食事内容を見直すようにしましょう。

カロリー不足を解消する

まずは、1日の総摂取カロリーを見直すようにしましょう。

もしあなたの総摂取カロリーが1500キロカロリーを下回っているのであれば、ほぼ間違いなくカロリー不足です。当然、仕事などで活動量が多かったり、運動をしていたりするのであれば、1500キロカロリーでも少ないと考えてください。

まず最低でも、活動で消費されるカロリー+(除脂肪体重×30キロカロリー)は摂るようにしましょう。これよりカロリー量が低くなると、ホルモンや自律神経に悪影響を及ぼすとされています。

除脂肪体重とは、全体重から脂肪量を引いた値です。例えば、体重が50キロで体脂肪率が20パーセントであれば、除脂肪体重は以下のように算出されます。

除脂肪体重=50-(50×0.2)=40

つまり、この場合には、40×30lcal/日=1200キロカロリー(+活動で消費されるカロリー)となります。

ただ、間違えないでほしいのは、「この量を摂っていれば安心」ということではありません

これは、ホルモンや自律神経に悪影響を及ぼさない最低限の値だという認識を持っておいてください。この値以下になると、生理が止まるなど、何かしらの問題が体に生じている可能性が高いです。

実際には、この値+300~500キロカロリー、また、妊娠中や授乳中であれば、300~400キロカロリーくらいさらにプラスして摂るようにしましょう。

もし計算した値よりカロリー量が少なければ、まずは食事量をプラスして食欲の変化を確認してみてください。

カロリー計算に関しては、スマホのアプリなどで簡単に行えますので、ぜひ利用してみてください。

栄養不足を解消する

カロリーを十分に摂っているにも関わらず、食欲が落ち着かない場合は、栄養不足を疑います。中でも、糖質制限をしているのであれば、まず糖質の摂取量を見直します。

糖質の摂取量は、女性であれば最低でも1日100g以上摂ることをお勧めします。150g前後は摂るようにするのが理想的です。

確かに、糖質の摂り過ぎは太る原因になりますが、1日150~200gくらいであれば、糖質が原因で太ることはありません

一般的な食事であれば、1日の糖質量は250~300gになります。1日の糖質量を150gまで減らしているのであれば、糖質量は十分制限できているといえるでしょう。そのため、150~200gの糖質量まで減らして痩せないのであれば、糖質以外に痩せられない原因があると考えてください。

糖質の摂取量を見直しても食欲が落ち着かないのであれば、次は他の栄養素不足について考えます。

例えば女性であれば、鉄不足が食欲を乱しているケースは多いです。既に述べたように、生理前に食欲が強くなったり、出産後から食欲が増したりしたのであれば、鉄不足を補うことで食欲が落ち着く可能性が高いでしょう。

他にも、ビタミンBやマグネシウム、亜鉛も欠乏すると食欲を乱しやすい栄養素です。以下に、それぞれが不足しているときに起こりやすい不調を挙げます。

茶碗一杯の白米(150g)で糖質量が55gのため、一日に茶碗2杯分程度の主食を摂りながら主菜や副菜をバランスよく食べると栄養不足やカロリー不足が解消されやすいでしょう。

鉄不足

・爪が割れやすい、やわらかい、丸みがない

・髪の毛が抜けやすい

・アザができやすい

・生理前に不調(PMS)が起こる、食欲が過度に増す

・出産後からの体調不良

・疲れやすい

・めまいや立ち眩み、頭痛がある

・冷えやすい

・喉に引っかかり感がある

・イライラしやすい

ビタミンB不足

・睡眠の質が悪い

・音に敏感

・集中力が低い

・口内炎がよくできる

・食べ過ぎてしまう

・日中の眠気が強い

・モチベーションが上がらない

マグネシウム不足

・不安になりやすい

・気分が落ちやすい

・不整脈になりやすい

・偏頭痛がある

・睡眠障害がある

・よく筋肉が引きつる

亜鉛不足

・味を感じにくくなった

・月経不順がある

・爪に白い斑点ができる

・髪の毛が抜けやすい

・かぜを引きやすい

・食欲が沸かない

・乾燥肌である

・傷の治りが遅い

・皮膚炎を起こしやすい

・慢性的な下痢がある

依存性が高い食品を避ける

意志力が弱かったり、食べ物への興味・関心が強かったりする人は、依存性が高い食品はできるだけ避けた方が良いです。そうした食品を食べるほど依存してしまい、どんどん食欲は乱れてしまいます。

例えば、「いつも食べ物のことばかり考えている」「いつも悩んで結局食べてしまう」というのであれば、できるだけ依存性が高い食品は避けた方が良いでしょう。

そうはいっても、ゼロにすることは不可能ですので、できるだけ減らすように心がけてください。

また、先に述べたように、砂糖と脂肪、塩は、依存性を作り出す代表的な組み合わせです。そこで、砂糖と脂肪、塩が使用されている、依存性が高い食品の代表例を以下に挙げておきます。

・お菓子類(クッキーやチョコレート、アイスなど)

・パン

・加工食品全般

・調味料全般(ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ)

さらに、これらは組み合わせるほど依存性を強めます。例えば、ハンバーガーは、パンと加工肉、調味料を使用しているため、依存性が高くなります。これが、「パンだけ」「ハンバーグだけ」であれば、組み合わせたハンバーガーよりも依存性は弱くなるでしょう。

そして、人は避けようとしたり禁止したりすると、逆に食べたくなるという心理が働きます。

そのため、依存性が高い物は完全に避けると考えるのではなく、「できるだけ調味料は少なめで薄味にする」「できるだけ素材に近い形で食べる(加工食品は少なめにする)」「無駄にトッピングしない」という意識を持つと良いでしょう。

例えば、「肉は焼いて塩味で食べる」「野菜はマヨネーズではなく塩で食べる」「チーズハンバーグではなく、ハンバーグにする」といった工夫をするだけでも、食べ物による依存が弱くなるため、工夫してみましょう。

睡眠不足を解消して食欲を落ち着かせる

朝の目覚めが悪かったり、日中に眠くなったりして、睡眠不足による食欲増進が疑われるのであれば、まずは睡眠時間を見直しましょう。できれば、睡眠時間は7時間半以上取ると良いです。

7時間半以上寝ているのに、目覚めや日中の眠気がある場合は、睡眠の質を見直してください。

理想的な睡眠時間

前述したように、睡眠が重要な理由の一つに、睡眠時間がホルモンバランスに影響するということが挙げられます。

特に、グレリンやレプチンなどの食欲ホルモンに関しては、睡眠時間との関連性において、さまざまな研究が行われています。

例えば、「10時間睡眠と4時間睡眠の人を比べると、4時間睡眠の方が血液中のグレリン量が約30パーセントも高くなっていた」という報告があります。グレリンは、食欲を促す作用を持っているため「短時間睡眠の方は食欲が増した」ということがいえます。

また、「3歳時の睡眠時間が9時間未満の人は、同時期の睡眠時間が10時間以上の人と比較して、10年後に肥満となる確率が1.6倍になる」という報告もあります。

このように、肥満と睡眠の関係を調べた研究には「短時間睡眠の方が太りやすくなる」という結果を示しているものが多い傾向にあるのです。

ただそうはいっても、実際に必要な睡眠時間には個人差があります。例えば私の場合、7時間以上眠らなければ、食欲が増したりイライラしやすくなったりします。その一方で、6時間睡眠でも何の不快感もなく生活している人もいるのです。

それでは、個人個人に適した睡眠時間は、どのようにすれば見つけることができるのでしょうか?

あなたに合った睡眠時間を見つける方法

あなたに合った睡眠時間を見つけるためには、睡眠時間を変えたときに、体に起こっている反応を見ることが大切になります。

例えば、睡眠時間が十分に足りていれば、日中に眠気が生じたり過剰にイライラしたりすることはありません。また、朝もスッキリ目覚められるはずです。

このように、寝起きや日中の調子を確認することで、あなたに必要な睡眠時間を見つけることができます。

具体的には、以下に記すような不快感が出現しないくらいの睡眠時間が、あなたにとって理想的な睡眠時間だといえます。

・目覚めがすっきりしている

・日中に眠気が生じない(昼過ぎの眠気は問題ない)

・重だるさなどの倦怠感を感じない

・過剰にイライラしない

・ボーっとする時間があまりない

当然、十分に睡眠時間を確保しても睡眠の質が悪ければ、睡眠不足であるのと同じです。そのため、どれだけ睡眠時間を長くしても、以上に挙げた不調が生じる場合には、睡眠の質を見直すことが大切になります。

ただ基本的には、このように体の調子を確認していけば、あなたに合った睡眠時間を見つけることができるようになります。

どうしても睡眠時間が確保できないなら昼寝を使う

寝不足の人の中には、「どうしても睡眠時間を確保できない」という人もいます。例えば、仕事の残業が原因で睡眠不足となっている人などです。

そうした人たちには「昼寝」をおススメします。昼寝には、睡眠時間を補うだけでなく、朝に蓄積された疲れを一度リセットする効果があります。そして、わずか10分程度の昼寝が、午後からの仕事効率を高くすることにもつながるのです。

具体的には、15時前までに10~20分程度の昼寝をするようにしましょう。

15時以降に昼寝をすると、夜の眠りに影響します。また、30分以上眠ると深い眠りに入ってしまいます。そうなると、昼寝から目覚めにくくなるだけでなく、昼寝後に頭がボーっとしたり体がだるくなったりします。その結果、昼からの活動がはかどりにくくなるのです。

昼寝は、横になって眠ることが理想的ですが、座って目を瞑るだけでも効果はあります。そのため、会社で横になれないような場合には、デスクやトイレなどでちょっとだけ眠ることも有効です。

このように、睡眠時間が確保できない場合には、昼寝を活用しましょう。

睡眠の質を高めるポイント

睡眠の質を高めるためにやるべきことは、人によって異なります。ただ、大きく分けて「好ましい生活習慣を心がける」「避けるべき生活習慣に注意する」という2点がポイントになります。

以下に挙げるポイントから、あなた自身が取り組めそうなことを見つけて実践してみてください。

・好ましい生活習慣を心がける

昔からの習慣が原因で眠れない人は、生活習慣を見直すことが大切です。特に、意識して早く眠ろうとしても眠れない人は、生活習慣に問題があるケースが少なくありません。

そのため「眠りたいけど眠れない」という人は、良質な眠りを導く好ましい生活習慣について理解して実践するようにしましょう。

以下に、睡眠の質を高める生活習慣について解説します。

1.食事で安眠を導く

食事は、安眠を導くための一つの有効な手段です。

例えば、脳をリラックスさせて睡眠を良好にするためには「セロトニン」というホルモンが必要になります。そして、セロトニンが合成されるためには、その材料である「トリプトファン」と呼ばれる栄養素が不可欠です。

トリプトファンとはタンパク質の一種であり、体内で作ることができないため、食事から必ず摂取しなければいけない栄養素です。

そのため、普段からトリプトファンを多く含む、魚介類や鶏肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など)、ごまなどを意識して摂ることは、良好な睡眠を導くことをサポートします。

また以下に記す栄養素も睡眠の質に影響します。

ビタミンB3らっかせい、エリンギ、なめこ、アボカド、魚介類(たらこ、かつお、さば)、豚・牛レバー、ささみなど

栄養素 食品例
ビタミンB1 豚肉(赤身)、たらこ、ウナギ、玄米、全粒粉、大豆など
ビタミンB6 レバー(牛、豚)、鳥ササミ、マグロ、カツオ、バナナなど
ビタミンB12 レバー(牛、豚、鳥)、サンマ、シジミ、アサリ、牡蠣(カキ)、ハマグリなど
ビタミンC 赤ピーマン、菜の花、ブロッコリー、柿、キウイフルーツ、イチゴ、オレンジなど
カルシウム 牛乳、乳製品、干しえび、小魚、モロヘイヤ、小松菜など
マグネシウム アーモンド、ゴマ、玄米、大豆、ほうれん草、ワカメなど
亜鉛 レバー(牛、豚)、牡蠣(カキ)、ホタルイカ、納豆、イイダコ、高野豆腐など
グリシン 車えび、イセエビ、うに、、ホタテ、牛肉、豚肉、アーモンド、鶏肉、納豆など
トリプトファン バナナ、豆乳、牛乳、乳製品、アーモンド、白米、そば、納豆など
テアニン お茶
GABA トマト、ナス、かぼちゃ、メロン、キムチといった発酵食品など

さらに、就寝の2~3時間前に夕食を済ませておくことも、安眠するためには重要になります。寝る直前に食べると、胃腸が休まらずに睡眠に悪影響を及ぼすためです。

このように、食事を意識することは、睡眠の質の向上につながります。

2.入浴で安眠を導く

眠れない人の中には、お風呂をシャワーで済ませている人も少なくありません。しかし、シャワーよりも浴槽に浸かった方が良好な睡眠につながります

眠気を促す要因の一つに「体温の低下」が挙げられます。人の体は、深部体温(体の中心部の体温)が下がると、自然と眠気が生じるのです。

例えば、子どもが眠たいときには、手足がポカポカしてきます。これは、体の末端である手足から熱を逃がすことで深部体温を下げているためです。大人でも同様の現象は起こっており、眠たいときには手足が温かくなります。

そして、お風呂に浸かることで一時的に体温を上昇させると、その分だけ入浴後に深部体温が下がりやすくなるため、眠気が生じやすくなるのです。

また、浴槽に浸かってリラックスすることは、自律神経のバランスを整えて睡眠の質を高くします。

このような理由から、眠れない人は浴槽に浸かる習慣をつけるようにしましょう。

3.眠気がきたら眠る

人の体には、一定の睡眠と覚醒のリズムが備わっています。そして、そうしたリズムに逆らうと睡眠の質が下がってしまうのです。

例えば、夜の20~22時には体のリズムによって自然と眠気が生じます。このときに「眠たいけどまだ早すぎる」と考えて、眠気を我慢する人は多いはずです。

ただ、22時前後に生じる眠気を過ぎてしまうと、次に自然な眠気が起こるのは午前2時前後になります。つまり、夜中まで自然な眠気が起こらないのです。

もちろん、体が疲れている場合には、体のリズムによる眠気が生じる時間でなくても眠れます。しかしそれでも、可能であれば22時前後の眠気に合わせて眠った方が、寝入りもスムーズになりますし、眠りも深くなります。

特に「疲れていないから夜中まで起きている」という人は、こうした体のリズムによって起こる眠気に合わせて寝るようにしましょう。

4.朝日を浴びる

人の眠気には「メラトニン」と呼ばれるホルモンが関係しています。体内でメラトニンが合成・分泌されると、自然と眠くなるのです。

メラトニンは、明るい環境の中では合成されず、夜に作られます。

そして、夜に十分な量のメラトニンが作られるためには「朝日」を浴びることが重要になります。それは、メラトニンの合成に必要なセロトニンが、朝日を浴びることで作られるためです。

こうしたことから、夜の自然な眠気を導くためにも、朝起きた後にしっかりと朝日を浴びるようにしましょう。

5.日中に体を動かす

セロトニンを作るためには、朝日に加えて日中に体を動かすことも大切になります。

具体的には、ウォーキングやエアロバイクなどのリズム運動を15分以上行うと、セロトニンがたくさん作られるようになります。そのため、デスクワークなどで日中に体を動かす機会がない人は、食後に軽くウォーキングなどを実施すると良いでしょう。

もしウォーキングが難しければ、「ガムを噛む」ことでも良いです。噛むという行為が、あごの筋肉を使ったリズム的な運動となり、セロトニンの分泌を促します。

・避けるべき生活習慣に注意する

良好な睡眠をとるためには、好ましい生活習慣を続けることと同じくらい、避けるべき生活習慣を意識することが大切です。睡眠の質を高めるためにも、睡眠を妨げている生活習慣を見直すことが重要になります。

1.午後のコーヒーを避ける

コーヒーには「カフェイン」と呼ばれる脳を覚醒する物質が含まれています。そのため、夜にコーヒーを飲むと眠れなくなるのです。

注意しなければいけないことは、カフェインは「摂取した後も12時間程度体内に存在し続ける」ということです。つまり、夕方や夜でなくても、昼過ぎに飲んだコーヒーは、夜の睡眠にまで影響するということになります。

もちろん、カフェインの影響は人によって違うため、寝る直前にコーヒーを飲んでも問題ない人もいます。ただ、眠りが浅かったり、睡眠の質が悪かったりすることを自覚しているのであれば、コーヒーを午後に飲むことは避けるようにしましょう。

ちなみに、カフェインは玉露茶やコーラ、栄養ドリンクなどにもたくさん入っているため注意してください。

2.テレビやスマホ、パソコンは注意

既に述べたように、メラトニンは眠気を誘発するホルモンの一つです。そして、メラトニンは明るい環境では合成されません。

特に、テレビやスマホ、パソコンの画面から発せられる「ブルーライト」は、メラトニンの合成を妨げる大きな原因です。こうしたテレビやスマホ、パソコンによってブルーライトを浴びていると、夜であるにも関わらず、体は「朝日を浴びている」と勘違いして体を覚醒させようとします。

その結果、メラトニンが十分に合成されず、眠れないようになるのです。

こうしたことから、夜はテレビやスマホ、パソコンの使用を控えるようにしましょう。特に、睡眠の1~2時間前には、ブルーライトを避けることをお勧めします。また、部屋の照明を暗めにしておくことも、メラトニンの合成を促すためには大切です。

3.仕事後の運動を避ける

よくあるケースとして、健康のためにと、仕事帰りにジムへ通い、帰宅が遅くなることで睡眠時間が削られていることがあります。ただ、夕方以降の運動が睡眠に与える影響は、それだけではないのです。

人の体には「朝目が覚めて夜眠くなる」というリズムが備わっています。そのため、夕方以降は体がリラックスモードになるのが自然のリズムです。

しかし、もし仕事後にジムなどでハードな運動をすると、体を無理やり覚醒させることになります。つまり、仕事後のジムは、夜にリラックスするという体の自然なリズムに反することになるのです。

その結果、帰宅後にも興奮した状態が続いて、眠れなくなってしまいます。

このような理由からも、良好な睡眠を得るためには、仕事後の運動は避けるべきだといえます。ただ、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は体を興奮させないため、夜に行っても問題ありません。

眠れないときにアルコールは有効か?

「睡眠時間は確保できるけど、なかなか眠れない」という人の中には、「アルコールを飲むと良く眠れる」という人も少なくありません。

確かに、アルコールを飲むと眠気が起こって眠りやすくなります。ただ、眠れないからといってアルコールに頼るのは避けましょう。アルコールは自律神経のバランスを崩して、睡眠の質を悪くします。

アルコールは、適量であれば副交感神経を活性化して体をリラックスします。アルコールの適量は人によって異なりますが、一般的には以下の飲酒量であれば体への悪影響は小さいといわれています。

アルコール
ビール 中瓶1本(500ml)
日本酒 1合(180ml)
焼酎 0.6合(110ml)
ワイン 1/4本(180ml)
チューハイ 1.5本(550ml)

もし飲むとしても、この程度の量であれば自律神経への影響も小さく、睡眠の質も下げない可能性が高いです。

そのため、もし眠るためにアルコールを飲むのであれば、以上に記した量に抑えておきましょう。

基本的にはアルコールに頼らずに眠れるようになることが大切です。

ストレスを解消して食欲を落ち着かせる

ストレス解消を最後に挙げたのは、ストレスコントロールが最も難しく時間がかかるからです。もちろん、可能な範囲でストレスコントロールをすることは大切ですが、食欲が乱れている原因をストレスだと考えると、改善することが非常に難しくなります。

そのため、これまで挙げた問題(食事、睡眠)を解消した上で、まだ食欲が乱れているのであれば、ストレスコントロールに力を入れるようにしましょう。

ストレスはポジティブに捉えると痩せやすくなる

ストレスは、食欲を増したり、脂肪の燃焼を悪くしたりと、ダイエットにとって好ましくない刺激と考えられがちです。

確かに、ストレスが原因で痩せにくくなっている人はたくさんいます。しかし、ストレスはあなたの考え方次第で、痩せやすい体作りにつなげることができるのです。

ストレスをネガティブに捉えていると、ストレスによって「脅威反応」と呼ばれる反応が起こります。

脅威反応とは、血流が悪くなったり、恐怖や不安、怒りといった感情が起こったりする現象です。ストレスに対して脅威反応が起こると、代謝が悪くなって脂肪が燃えにくくなったり、不安が強くなって食べ過ぎたりします

その一方で、ストレスをポジティブに捉えると、ストレスを受けたときに「チャレンジ反応」と呼ばれる反応が起こります。

チャレンジ反応とは、血流が良くなったり、興奮や自信、といった感情が起こったりする反応です。チャレンジ反応が起こると、代謝が良くなって痩せやすくなるだけでなく、食欲も落ち着きます

このように、一言でストレスといっても、あなたの捉え方次第で敵にも味方にもなります。そのためにも、まずは「ストレスは体に良い影響を与えるもの」という認識を持って、ポジティブに捉えることが大切です。

もちろん、どれだけポジティブに考えても、あなたが処理できないくらいストレスが大きければ、脅威反応が引き起こされることは頭に入れておいてください。

体力をつけるとストレスに負けない

脅威反応が引き起こされるかどうかは、ストレスに対する捉え方だけでなく、「ストレス耐性」、つまり「どれだけストレスをストレスと感じないか?」も影響します。

同じ状況であっても、人それぞれ受けるストレスの感じ方は違います。当然、ストレスを強く感じる人の方が、体で起こる脅威反応も強くなります。

ストレス耐性には、先に述べたストレスに対する考え方も影響しています。ストレスをネガティブに捉えている人ほど、ストレス耐性は弱く、脅威反応が起こりやすくなります。また、意外かもしれませんが、体力もストレス耐性と関連しています

体力がないと、ストレスを感じやすくなり、脅威反応が起こりやすくなるのです。

不安や恐怖などでストレスを感じると、呼吸や心拍数が乱れるのは想像がつくと思います。これは、感情が自律神経に影響して呼吸や心拍数を変化させるためです。実は、逆に呼吸や心拍数が乱れることでも、不安や恐怖という感情を引き起こすことにつながります。

つまり、

「不安や恐怖(ストレス)→自律神経→呼吸・心拍数増加」

だけでなく

「呼吸・心拍数増加→自律神経→不安や恐怖(ストレス)」

という反応も起こるのです。

例えば、体力がない人は、ちょっとしたストレスでも呼吸や心拍数が大きく乱れます。そのため、ストレスによる脅威反応が引き起こされやすくなるのです

こうしたことからも、ストレス耐性を高めるためには、考え方だけでなく体力をつけることも大切になります。

効果的なストレス解消法

ストレスをポジティブに捉えて、さらに体力をつけることでストレス耐性を高めれば、ストレスによる脅威反応で、代謝が落ちたり、食べ過ぎたりしにくくなります。

しかし現代社会は、それでも意識して定期的にストレスを解消した方が良いくらい、ストレスが多いです。

ただ、「ストレスが発散された」と感じるものであれば何でも良いかというと、そうではありません。ストレス解消法にも、有効であるものと逆にストレスを悪化させてしまうものがあるのです。

具体的には、アメリカ心理学会(APA)が、以下のような「有効なストレス解消法」と「効果が期待できないストレス解消法」を提唱しています。

効果的なストレス解消法

・エクササイズやスポーツ

・礼拝への出席

・読書

・音楽

・家族や友達と過ごす

・外へ出ての散歩

・マッサージ

・瞑想やヨガ

効果が期待できないストレス解消法

・ギャンブル
・ショッピング
・タバコ
・酒
・やけ食い
・テレビゲーム
・ネットサーフィン
・テレビを見る
・映画

定期的にストレスを解消するときには、以上の「効果的なストレス解消法」の中から選ぶと良いでしょう。

間違っても、ストレスが溜まって食欲が落ち着かないからといって、ネットサーフィンやテレビゲームなどでストレスを解消しないようにしてください。

逆に食欲を強める可能性が高いため、要注意です。

腸内環境を整えて食欲を落ち着かせる

腸内環境を改善するためには、主に「自律神経を整える」「腸内細菌のバランスを整える」という2つのことが重要になります。

自律神経は腸の運動をコントロールしているため、自律神経が整うと腸が活発に動くようになります。その結果、快便となって古い便が溜まらないようになり、腸内が綺麗に保たれるのです。

また、腸内環境の良し悪しは腸に生息する細菌(腸内細菌)のバランスによって左右されるため、腸内細菌のバランスは非常に重要になります。

このように、腸内環境を整えるためには、自律神経と腸内細菌のバランスが大切になるのです。

自律神経を整える

自律神経は交感神経と副交感神経がバランスをとることで、体の機能をコントロールしています。腸の活動も自律神経によって調整されています。

具体的には、交感神経の活動が活発になると腸の動きは悪くなり、副交感神経の活動が強くなると腸の運動が促されます。そのため、交感神経が強く働くと、腸の活動が悪くなって、便秘を招くことになるのです。

そして便秘になると、古い便が腸内に蓄積するため腸内環境は悪化します。

交感神経を刺激して自律神経のバランスを悪くする主な要因としては「ストレス」「睡眠不足」の2つが挙げられます。

ストレスを溜めすぎたり、寝不足が続いたりすると「ストレス・睡眠不足 → 交感神経の緊張 → 腸の運動低下 → 便秘 → 腸内環境の悪化」というメカニズムによって、腸内環境が悪くなります。

そのため、腸内環境を良くするためには、ストレスや睡眠不足を解消して自律神経のバランスを整えることが大切なのです。

腸内細菌のバランスを整える

腸内細菌のバランスを整えるためには、「腸に良い菌(善玉菌)を摂る」「善玉菌の餌となる物質を摂る(善玉菌を増殖させる)」という2点を意識することが大切です。

前者を「プロバイオティクス」、後者を「プレバイオティクス」といいます。

プロバイオティクスが豊富に含まれる食品やサプリメントを摂取することで、直接的に腸内の善玉菌を増やすことにつながります。善玉菌としては「ビフィズス菌」や「乳酸菌」などが有名です。そのため、ビフィズス菌や乳酸菌のサプリメントを摂取することで、プロバイオティクスによる整腸効果を得られることになります。

その他にも、プロバイオティクスを豊富に含む食品としては、以下のような食品が挙げられます。

・ヨーグルト(生菌入り)
・キムチ
・ピクルス
・ザウアークラウト
・発酵調味料(醤油、味噌、酢など)
・発酵した肉、魚、卵

また、プレバイオティクスを豊富に含む食品やサプリメントを摂取することも腸内環境を整えるためには有効です。プレバイオティクスは、既に生息している善玉菌のエサとなり、数を増やしたり元気にしたりすることにつながります。

さらに、プレバイオティクスには、痩せ菌である「バクテロイデス菌」とデブ菌である「フィルミクテス菌」のバランスを整える作用がある、ということが明らかになっているのです。つまり、プレバイオティクスを意識すると、痩せやすい腸内環境を作ることにもつながります。

プレバイオティクスには、その他にも以下のようなさまざまな恩恵があることが明らかになっています。

・炎症を軽減して大腸がんの発生を防いだり、心血管疾患のリスクを下げたりする
・ミネラルの吸収を高める
・満腹感を促進する(プレバイオティクスには、食欲促進ホルモンである「グレリン」の分泌を抑える働きがある)
・糖化(細胞に糖分が付着する反応で、細胞の正常な働きを妨げる)を抑える

プレバイオティクスを豊富に含む食品には以下のような食品が挙げられます。

・生のニンニク
・生の西洋ネギ
・タマネギ
・生のアスパラガス
・生のキクイモ

プレバイオティクスに関しては、食事からだけでは不足しがちであるため、サプリメントなどで摂取することも有効です。

まとめ

今回述べたように、食欲を乱す原因は主に「食事」「睡眠」「ストレス」「腸内環境」「習慣」の5つにあり、あなた自身の問題がどこにあるかを推測した上で、適切な対策を実施することが大切です。

ぜひ以上に記した内容を実践し、食欲を落ち着かせるようにしましょう。

*習慣によって食べ過ぎてしまう場合は、「食欲を劇的に落ち着かせる4ステップ」を参考にしてください。